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筆者は『プロの翻訳家』と名乗るには程遠い新人翻訳者なのですが、いちおう韓日字幕翻訳の仕事(韓国のバラエティーやドキュメンタリー番組に日本語字幕をつける仕事)をしています。
字幕翻訳の仕事は、パソコン1台で場所を選ばずに作業することができる点が大きなメリット。
最近では、新型コロナウイルスの影響で外出自粛や在宅勤務が呼びかけられる中で、家から出ずに仕事ができるありがたみを改めて感じています。
そんな字幕翻訳家ですが、実際なるには映像翻訳学校に通ったり、高い字幕制作ソフトを買ったりしなければならずお金がかかるため、目指すかどうかを迷っている方もいると思います。
そこで今回は、筆者が字幕翻訳の仕事を始めるまでにかかった費用(初期費用)を公開します!
【結論】
筆者の場合、韓日字幕翻訳家になるのに約50万円かかりました。
※ただし、韓国語を習得するのにかかったお金は除く
映像翻訳学校
字幕や吹替など映像翻訳の仕事を始めるには、まず最初に映像翻訳学校に通うケースがほとんどだと思います。
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字幕翻訳家になるには翻訳学校に通ったほうがいい?【英語・韓国語】
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この翻訳学校の受講料が、どこも高いんですよね・・・
英日は40~100万円、韓日だと20~30万円と、言語によって差はありますが、かなり高額です。
「学校に通ってみたけど仕事にはつながらなかった」となった場合、経済的・精神的ダメージが大きいので、筆者の場合できるだけリーズナブルなところを選びました。
かかった費用
✔ 入学金 5,000円
✔ 受講料(2コース) 140,000円
✔ 字幕制作ソフト代 20,000円
計 165,000円(税抜)
181,500円(税込)
学校に通える韓国語のレベル
翻訳学校と言っても、たいていの場合は「韓国語」自体を教えてもらえる訳ではなく、ある程度韓国語ができるという前提で「映像翻訳のルール」を教えるという学校がほとんど。
学校によっては韓国語能力試験(TOPIK)5級を受講条件にあげているところもあるので、TOPIK5~6級を目安にしてみてください。
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【韓国語能力試験】TOPIKおすすめ勉強法~5級・6級向けの対策~
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字幕制作ソフト『SST』
字幕翻訳の仕事に欠かせないのが、カンバス社の字幕制作ソフト『SSTG1(読み:えすえすてぃーじーわん)』シリーズです。
何種類か製品がありますが、筆者はNetSSTG1を購入しました。
NetSSTG1はSSTG1Lite2と比べて、製品価格が安い分、チケット代が高くなります。10年以上継続して使い続ける場合は、SSTG1Lite2の方がお得になります。
製品 | NetSSTG1 | SSTG1Lite2 | SSTG1Lite(販売終了) |
---|---|---|---|
最終チェック、MOV&MP4再生、 sdb検索などの新機能 | 〇 | 〇 | × |
アップデート頻度 | 随時 | 年1回 | なし |
製品価格(初期費用) ※税込 | ¥65,780 | ¥217,800 | ¥217,800 |
利用チケット費用(365日) ※税込 | ¥39,336 | ¥21,780 | 無料 |
チケットバリエーション | 10日, 30日, 90日, 180日, 365日 | 365日のみ | - |
さらに詳しく
SSTを利用するには最初に製品を購入し、利用チケットをサブスクのような形で購入し続ける必要があります。チケットの購入方法はこちらの記事もご参照ください。
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【字幕制作ソフト】NetSSTG1の利用チケットの買い方
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NetSSTG1を購入して、最初はちまちま1か月の利用チケットを買っていたのですが、結局割高になると気づき、途中で1年間の利用チケットを買うことにしました。
なので、初年度の費用としては12万円ほど。
かかった費用
✔ NetSSTG1 製品価格 59,800円
✔ 利用チケット(1か月) 5,380円 x 3回購入
✔ 利用チケット(1年間) 35,760円
計111,700円(税抜)
122,870円(税込)
パソコン
SSTをダウンロードできるパソコンはWindowsのみ。※Macには非対応
推奨スペックや動作環境については、SSTを販売するカンバス社の公式ホームページに詳しく記載されています。
ただし、スペックを満たすパソコンの中でも相性がいいPC、悪いPCがあるのでご注意を。
日本の大手メーカーのPCには、最初からいろいろなプログラムやアプリケーションがインストールされているため、それらとSSTがバッティングして操作に支障がでるというケースがあるそうです。
カンバス社としては、「あまり余計なソフトが入っていないビジネス用のメーカーのPCや、PC専門ショップ(ドスパラ、ツクモ等)のシンプルなPC」を推奨するとのこと。
また、字幕をエクスポートする際にExcelを使うので、Officeも入れておいた方が良いです。
かかった費用
✔ ノートパソコン 79,800円
✔ Office Home&Business 2019 32,000円
計 111,800円(税抜)
122,980円(税込)
PC周辺機器
字幕翻訳に必要なPC周辺機器として、イヤホン、モニター、キーボードがあります。
実は、翻訳学校・SST・パソコンの3つでかなりお金がかかったので、周辺機器については「稼げるようになってから良いものを買えばいいか」とケチりました笑
イヤホン(4,000円)とヘッドホン(8,000円)は家電量販店で購入。
モニター(2,000円)とキーボード(3,000円)についてはメルカリで中古のものを買いました。
かかった費用
イヤホン 4,000円、ヘッドホン 8,000円、モニター 2,000円、キーボード 3,000円
計 17,000円(税抜)
18,700円(税込)
辞書
英語の場合、『ランダムハウス英和大辞典』『リーダーズ英和辞典』『ロングマン英英辞典』などを使っている翻訳者さんが多いですが、韓国語の場合は市販の辞書を引くというより国立国語院(국립국어원)の公式ページで意味を確認したりすることが多いです。
この国立国語院のページは無料で利用できるので、特に費用はかかりません。
ただし、正しい日本語表記を調べるための日本語の用語辞典が必要になります。
例) 『嬉しい』という言葉は、『NHK漢字表記辞典』によると漢字で表記できないことになっているので、字幕ではひらがなで『うれしい』と表記する、など
筆者が翻訳学校の先生から聞いた、「字幕翻訳者が持っておくべき日本語表記3大辞書」は、
日本語表記3大辞書
①NHK漢字表記辞書 (NHK新用字用語辞書を改訂したもの) 1,800円+税
②共同通信社 記者ハンドブック 1,900円+税
③朝日新聞の用語の手引き 1,700円+税
の3冊です。
私の場合はこの3冊に加えて、カタカナ表記が調べられる『ことばのハンドブック』(1,900円+税)も購入しました。
追加購入したもの
実際に字幕翻訳の仕事を始めてみてびっくりしたのが、「日本語の辞書を引く機会が本当にたくさんある」という点。スポッティングをしたり聞き取ったり、韓国語を調べたりする以上に、正しい日本語表記で字幕をつけるという作業に時間がかかります。
ベテランになってもう頭の中に入っている、という状態だと無敵なのですが、筆者のような新人翻訳者の場合、辞書を引くという作業に膨大な時間を費やすことに・・・
そこで少しでも作業効率を上げるために、パソコンにインストールできる辞書を追加で購入しました。
『NHK漢字表記辞書』をパソコンにインストールして、文字をタイピング⇒Shiftキーを押すと正しい表記が表示されます。
利用するには、日本語入力システム『ATOK』をインストールして、『ATOK Passport』というサブスクのサービス(月額500円 税抜)に申し込み、『NHK漢字表記辞書』のダウンロード版を辞書を購入してATOKに実装する形になります。
かかった費用
✔ 日本語表記3大辞書 5,400円
✔ 『ことばのハンドブック』 1,900円
✔ 日本語入力システム『ATOK』サブスク 月額500円
✔ 『NHK漢字表記辞書』ダウンロード版 4,200円
計 12,000円(税抜)
13,210円(税込)
セミナーや講演会
翻訳学校の授業の他に、カンバス社が開催しているセミナー(現在はあまり開催されていないようです)や、講演会にスキルアップのために参加するのもおすすめです。
私は以下の講座を受けてみました。
かかった費用
✔ カンバス社「SSTG1シリーズフ
✔ カンバス社「使えるスポッティング講座」9,800円
✔ 翻訳学校の臨時セミナー、講演会 10,000円
計 34,800円(税抜)
38,280円(税込)
個人事業主なら経費に!
個人事業主の方は、購入したアイテム・開業にかかった費用を経費処理することができます!
こちらの記事もご参照ください(青色申告者向け)。
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個人事業主が経費にできるもの~フリーランス翻訳家の場合~
続きを見る
まとめ・あとがき
あらためて計算してみると、字幕翻訳の仕事を始めるのにかかった費用は、
497,540円
でした。約50万円ほどを先行投資したということになります。
何とか初期費用は回収できましたが、これからも頑張らないといけませんね。
これから映像翻訳者を目指す方の参考になれば幸いです^^
ちー🍀
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字幕翻訳って最初はどれくらい稼げるの?翻訳レートが低下してるって本当?
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