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筆者はフリーランスになる前に、特許事務所で外国特許事務をしていた時期があります。
2年間勤めたあと、結局は人間関係が原因で辞めてしまいましたが、仕事は本当に楽しくて充実していました。
この記事では、転職を考えている方へ向けて、特許事務の仕事内容や年収、求められるスキル、退職理由などをまとめていきたいと思います。
こんな方におすすめ
- 専門的なスキルを身につけたい人
- 語学(特に英語)を生かして働きたい人
- 期限管理や、コツコツと作業をするのが苦ではない人
特許事務とは?
仕事内容
『特許事務』とは、特許や商標などの出願から特許(登録)されるまでの一連の手続きにおいて、弁理士をサポートする事務のお仕事です。
特許に関する技術的な内容については、もちろん弁理士の先生方が担当してくれるので、事務が担当するのはそれ以外の部分。
さまざまな手続きの期限管理や、手続書類のチェック、出願人(クライアント)への書類や請求書の送付といった業務を行います。
その中で最も重要だと言えるのが、期限管理。
どんなに素晴らしそうに見える発明でも、一発で許可(特許)されるのは非常にまれです。
出願すると、発明の内容が特許庁にて審査され、「これこれこういう理由で許可できない」ということが書かれた通知書(通称オフィスアクション、OA)が送られてきます。
これに対して、反論(応答)を提出しなければならないのですが、応答期限が約2~3か月と決められているため、毎回結構ギリギリになります。
特に外国出願の場合、外国語で書かれた通知書を日本語に訳したり、反論の内容をクライアントと協議したり、海外の現地代理人にアドバイスを仰いだりと、やることがたくさん。
応答期限に間に合わせるためには、日程を逆算して『誰に何をいつまでにやってもらうか』を細かく期限管理することが不可欠です。
国内事務 or 外国事務
特許事務には主に国内事務と外国事務がありますが、外国事務は更に『外内(がいない)』と『内外(ないがい)』に分けられます。
・外内:外国の出願人が日本で出願するのをサポート
・内外:日本の出願人が外国で出願するのをサポート
筆者は外国事務の中でも、『内外』を担当していました。
クライアントは日本企業で、日本で特許された出願(基礎出願)に基づいて、米国や欧州、中国、韓国などの諸外国の特許庁への出願手続きをサポートします。
特許は基本的にその国の言語で出願しなければいけないため、出願する国が多いほど、さまざまな言語に触れることになります。
また外国出願の場合、各国の特許庁に直接出願するのではなく、提携している現地代理人を通して手続きを行うため、コミュニケーションでも外国語(基本的に英語)を使用します。
求められるスキル
資格は必要なし
まず、特許事務の仕事をする上で必要な資格はありません。
特許事務所で働き始めてから、OJTで制度や業務のことを学んでいけば大丈夫です。
最初は意味不明でも、1年ほど続けるとだんだん流れが分かってくるようになってきます。
外国事務なら英語は必須
外国事務の場合、外内・内外に関わらずほぼ毎日英語に触れるので、英語が得意な人、または英語に抵抗のない人が向いていると思います。
事務所によっては、募集要項で『TOEICのスコア700点以上』という風に定めているところも。
ポイント
外国特許事務の求人に応募する際には、TOEICやTOEFLのスコア、仕事で英語を使った経験などを履歴書に書いてアピールすべし!
なお、英語以外の言語については、使う機会が少ないです。
例えば、中国、台湾、韓国の場合は日本語が流ちょうな現地代理人が多いため、庁通知なども日本語に訳して送ってくれるケースがほとんど。
筆者は韓国語が得意なのですが、韓国特許庁からの通知に何と書いてあるか読めたり、たまにちょっとした翻訳を頼まれるくらいで、特に役には立ちませんでした。
アラビア語やスペイン語などについては、現地代理人が庁通知を英訳して送ってくるので、やはり必要なのは英語です。
向いている人
私が考える『特許事務の仕事に向いている人』の特徴は・・・
✔ 地道にコツコツと作業をするのが苦ではない人
✔ 期限管理が得意な人
✔ 書類の誤字脱字や記入漏れによく気づける人
特許事務では、ひたすら手続書類のチェックをして、正しい内容で提出されているかを確認する必要があるので、『書類の誤字脱字や記入漏れによく気づける』能力はとても大事です。
特に内外事務の場合、現地代理人がこちらの指示通りに書類を作成せず、間違った内容で特許庁に提出されてしまうことがたまに発生するので、注意が必要です。
ココがポイント
特に出願内容が間違っているとのちのち大変なことになるため、細心の注意が必要
年収
特許事務の年収は、300~450万円というところがほとんど。※正社員の場合
筆者の場合も、月収が28万円程度(手取りで22~23万円)、ボーナスが年2回あって、年収にすると400万円ほどでした。
専門職なだけあって、他の一般的な事務職と比べると高収入・高時給なのが特許事務の特徴。
ただ、営業職などとは違い、長く勤めていても大幅な年収アップはあまり期待できません。
違いが出るとすれば、残業代の分といったところでしょうか。
特許事務所への転職は?
特許事務の仕事を探す際は、一般の求人サイトよりも特許事務所専用の転職サイトを利用するのが効率的です。
『リーガルジョブボード』には弁理士や特許技術者だけでなく、特許事務員の求人も掲載されているので、特許事務所での仕事に興味がある人はご参照ください。
<求人掲載例>
働いてみて良かった点&嫌だった点
特許事務員として2年間働いてみて、個人的に良かった点と嫌だった点をまとめてみました。
良かった点
・自分のペースでコツコツ仕事ができる点
・専門的な知識、スキルが身につく点
・毎日さまざまな言語に触れられる点
人と話すのがあまり得意ではない筆者にとって、手続書類のチェックなど、自分のペースでコツコツ仕事ができる環境はとても心地よかったです。
また特許事務は、特許の制度や業務内容をきちんと覚えさえすれば、女性でも長く働けるという点が魅力だと思います。実際に、子育てをしながら働いている人も多いです。
嫌だった点
・期限ギリギリの手続きが続くとストレスになる
・「所長や管理職の言うことが絶対」という雰囲気がある
・苦手な人がいても回避しづらい
普段どんなに頑張って期限管理をしていても、外的要因で手続き期限がギリギリになってしまう案件は必ず発生します。
ほとんどの場合、弁理士の先生やクライアントに対してお願いをしたり、催促したりしなければならず、筆者はこの点が『つらい』と感じました。
また、中小規模の事務所が多いことから、苦手な人がいても回避しづらいという特徴も。
弁理士の方が所長として事務所を立ち上げる場合が多いため、一般的な企業と違ってトップがほとんど変わらず、「所長や管理職の言うことは絶対」という雰囲気があります。
所長をつとめるくらいですからある程度人望のある、すばらしい方がほとんどですが、人によっては合う・合わないがあると思います。
退職理由
そんな筆者の退職理由は、ずばり『人間関係』です。
仕事内容や環境は良かったものの、どうしても苦手な人たちがいて、それを克服することができませんでした。
小さい事務所だったこともあり、部署間(国内・内外・外内)で異動しても避けられない存在だったので、退職を決めましたね。
上の『嫌だった点』とも関連しますが、特許事務所はその事務所特有の雰囲気があるので、その雰囲気に合うか合わないかによってずっと働き続けられるか、辞めることになるかが決まると思います。
転職する前に
でも、転職先の雰囲気や働きやすさなんて、実際に入ってみないと分からないですよね。
少しでも自分の理想とのギャップを埋めて、長く働ける場所を見つけるには、転職サイトなどの口コミを見るのも大切だと思います。
応募する会社の口コミ、特に『退職理由』を知っておくことで、「自分も同じ理由で辞めることにならないか?」「本当にこの事務所(会社)に入って大丈夫なのか?」が見えてくるかもしれません。
あとがき
フリーランスで始めた翻訳の仕事には満足していますが、「あの時、あの苦手な人たちにさえ遭遇しなければ、ずっと特許事務を続けていたんだろうなぁ~」なんて思ったりするくらい、特許事務は魅力的なお仕事。
専門的なスキルを身につけて、長く働きたいという方にはおすすめです。
この記事が、特許事務所への転職を考えている方、転職先で悩んでいる方の参考になれば幸いです。ちー🍀