韓国ドラマや映画が好きで、日本語字幕を見ながら韓国語を勉強しているという人も多いと思います。
筆者は韓日字幕翻訳の経験があるのですが、仕事をやってみて気づいたのは、
「韓国語のセリフと日本語字幕は、必ずしもイコールではない」
ということ。
今回は、韓国ドラマや映画で韓国語を勉強するときの注意点と、おすすめの勉強法を紹介していきます!
字数制限
韓国ドラマを見ていて、
「韓国語ではもっといろいろ話しているはずなのに、字幕はなんでこんなに短いんだろう?」
「このセリフ、訳されてない!」
と感じたことはありませんか?
私も、字幕翻訳の仕事をやる前はそういった違和感を感じることがありました。
でも、映像翻訳学校で字幕翻訳には『1秒4文字ルール』という字数制限があることを習って納得しました。
字幕翻訳の『1秒4文字ルール』
例えばセリフが3秒間続いている場合、字幕はセリフの多さに関わらず、原則12文字(3秒x4文字)までしか訳を入力できません。
そうなると、どうしても訳にできない部分や、省略したり、短い言葉に言いかえたりしなければいけない部分がでてきます。
そのため、日本語字幕を活用して韓国語を勉強するときは、「セリフと字幕は同じではない」ということに気をつける必要があります。
繰り返し
字幕翻訳では、セリフが2回目繰り返される場合、セリフは同じでも2回目は訳をあえて変えてある場合があります。
例えば、登場人物が「살려주세요! (助けてください!)」と繰り返し助けを求めているような場面。
1回目は「살려주세요」は「助けてください」でも、
2回目の「살려주세요」は「お願いです」と訳すという具合に、訳が異なることも。
この例えでいうと、「살려주세요」の意味は「お願いです」ではないので、韓国語を勉強するときは混乱しないように注意が必要です。
字幕にできない言葉
また、日本語にしてはいけない、できない言葉があります。
例えば、韓国ドラマや映画で頻出する「미쳤어(ミチョッソ)?」について。
「미치다」は「気が狂う」「気が違える」という意味ですが、
× 狂ったの?
× 頭おかしいんじゃないの?
と訳することは避けるべきとされています。
これは、「狂う」とか「頭がおかしい」という表現が、精神的な病気を抱えている方への差別になりうるという配慮があるそう。
そのため、「미쳤어?」に対する日本語訳は、
○ 正気なの?
○ 気は確か?
とぼかして訳されることが多いです。
욕(スラング、悪口)
「미쳤어?」に限らず、韓国ドラマや映画には『욕』と呼ばれるスラング・悪口がたくさん登場しますよね。
韓国語の『욕』はバラエティーに富んでいて、対応する日本語がないという場合も多いです。
「씨○」というスラングの中でも最上級といえる言葉でも、日本語字幕をみると「クソッ」という訳になっていたり。
あまりにもドラマの中の登場人物が自然に使っているので、まねして使ってしまうと大変なことになりかねません。
筆者の失敗談
私自身の失敗談として、韓国留学中に『욕』を使いすぎて友達から本気で注意されるという出来事がありました。
韓国語初心者が飲み会などでスラングを使うと、実際その場が盛り上がることもあります。
「外国人がよくそんな言葉を知ってるな」という風に。
私も周りの反応がおもしろくて調子に乗ってスラングを使いまくっていた時期がありました。
そんな時、ある1人の韓国人の友人から、
韓国人の友人
ちー、そういう汚い言葉は使わないほうがいいよ。
今は学生同士のノリだから問題にはならないかもしれないけど、大事な場面とか社会に出てからそういう言葉使いをすると、常識がない人だと勘違いされちゃうよ。
とものすごく真剣に注意されました。
ドラマや映画の中でスラングや悪口が使われていたとしても、実生活ではできるだけ避けたほうがいいということを学びました。
ここまでのまとめ
- 字幕翻訳は字数制限(1文字4秒)があって、「セリフ=字幕」とは限らない
- 日本語字幕にできない言葉がある
- 韓国語の『욕』には要注意
おすすめ勉強法
では、どうやって勉強すれば効果的なのでしょうか?
韓日字幕翻訳者の筆者が言うのも変ですが、「韓国ドラマや映画を一度字幕無しで見て、セリフをディクテーションして、韓国語字幕で答え合わせする」という方法をおすすめします。
おすすめ勉強法
(1)特定のシーンを決める(5分くらい)
(2)字幕をOFFにして映像を見てみる
(3)セリフをディクテーションする ※聞き取って、紙に書き出す
(4)字幕をONにして見てみる
(5)分からない単語を調べ、例文と一緒にメモしておく
まるまる1話は大変なので、好きなシーンを選んで字幕をオフにして流して、セリフをディクテーションしてみてください。
答え合わせには韓国語の字幕が必要なので、字幕がついている作品を選ぶと良いでしょう。
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あとがき
今では字幕なしでも韓国ドラマや映画を見れるようになりましたが、私は字幕ありで見るのが好きです。
それは、プロの字幕翻訳者の日本語訳が単純にすてきだから。
先日、今話題の『梨泰院クラス』第6話を見ていたときのこと。終盤で主人公セロイがスアに対して真剣に語りかけるシーンで、
「마음 편하게 백수 만들어줄게!」
というセリフがあるのですが、これが
「あの会社から解き放ってやる」
と訳されていました。
「백수」は日本語で「職無し」や「プー太郎」という意味なので、「백수 만든다」は直訳すると「職なしにする」ですが、日本語字幕では「解き放つ」と訳されていました。また、この表現は物語を通して頻繁に出てきます。
自分では到底思いつかないようなすばらしい訳で、やはりプロの方の訳に触れていると勉強になるなぁと思いました。
この4連休も外出自粛なので、自宅で韓ドラを楽しみたいと思います。
ちー🍀